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過去記事です。

子どもの甲状腺がんの6例中1例に、肺への転移が見つかっているんです。この事実は決して見過ごせません-松本市長菅谷昭氏の記事をテキスト化しました


あはは星人さんのブログに松本市長菅谷昭氏に取材した記事が掲載されていました。
とても貴重な記事のため、勝手ながらテキスト化して、ブログの記事にしました。

福島第一原発事故以降、福島県で実施されている甲状腺検査結果をどう見ればいいのかをとてもわかりやすく書いてあり、非常に参考になります。

新版 チェルノブイリ診療記 福島原発事故への黙示 (新潮文庫)




甲状腺検査〜この検査結果から言えること〜 菅谷市長の資料-あはは星人がゆく♪

コチラに掲載されている資料をテキスト化します。
(テキスト化ここから)


福島県の甲状腺検査で多数の子に
“しこり”発覚?
-この検査結果から言えること-


原発事故後、福島で実施されている甲状腺検査、中途集計ながら、その結果が平成24年9月11日に公表され、多くの保護者から不安の声が上がっています。専門家はこの検査結果をどう見るのか-。

チェルノブイリ事故後の子どもたちの甲状腺を見てきた、松本市長菅谷昭氏に伺いました。
(取材日 2012年11月5日)

甲状腺検査結果概要(被験者の子どもの年齢は0~18歳)



良性の結節や嚢胞ならほぼ気にする必要なし


私は、今回の福島の検査に参加したわけではありません。現在公表されているデータも限定的で、わからないこともあります。それを前提にお話させてください。

検査結果をみてみると、「結節や嚢胞」が認められたかどうかが書かれていますね【図1】。まず、これらが何なのかから説明しましょう。

腫瘤(しこり)は大きく分けて、2つの種類があります【図2】。これが先の「結節」と「嚢胞」です。



腫瘤(しこり)の種類


これが先の「結節」と「嚢胞」です。結節というのは「肉の塊」で、これには、良性のものと悪性のものがあります。この悪性のほうが「癌」であり、今回の甲状腺検査は、基本的にこの癌を発見するために行われていると考えられます。

この理由は、甲状腺の癌が放射線被曝によって生じる病気だからです。甲状腺癌と放射線被曝の関係は、今から26年前に発生したチェルノブイリ原発事故後、大勢の子どもたちに甲状腺癌が見つかったことで、明らかにされました。

一方、良性の結節は「腺腫」といい、癌とはまったく別物で、これが放射線によってできるかどうかはよくわかっていません。でも、良性の結節であれば健康に害を及ぼすことはなく、たとえ見つかっても、特に神経質になる必要はありません。

良性の結節が悪性のものに変化することも、まずないと考えて大丈夫です。そもそも癌は、放射線等で傷つけられた癌遺伝子(※)の異常により細胞が増殖していく病気です。良性の結節は、癌遺伝子が異常を起こしているわけではないので、通常それが癌になるとは考えられません。

さてもう一つのしこり、「嚢胞」は、その中身が「液体」になっています。しこりが見つかったという子どもの多くが、こちらの嚢胞のほうです。

嚢胞も、放射線被曝でできるかはわかっていませんが、これも癌と関連するという報告はなく、特別気にする必要はありません。

ただ、良性の結節も嚢胞も、次第に大きくなることがあり、"見かけ"の問題等で取り除くことはあります。その場合、結節は摘出手術、嚢胞は中の液体を注射針で吸引したりします。

要するに"確実に"それが良性の結節や嚢胞であるならば、まず気にする必要はないということです。

小さくても結節には要注意
半年後には再検査を


問題は、検査結果が本当に確実なのかという点です。今回の検査は、エコー(超音波)診断だけによるものです。原則的に、検査で5ミリより大きい結節、20ミリより大きい嚢胞が見つかった子が、二次検査(血液や尿の検査等)を受けることになっています。

精度の高い機械を使っているためか、嚢胞は3ミリ以下の小さなものまで含めると、43.1%の子どもから見つかっていますね。見つかるのはいいのです。でも、小さなものはある程度の大きさにならないと、結節なのか嚢胞なのか判断をつけるのが難しいんです。したがって「病理組織診断」(切除した組織を顕微鏡で見て診断)をした上でないと、確実な判定はできません。

ですから、しこりが見つかった場合に言えるのは、たとえば、「嚢胞のように見えるが、誤診の可能性もないとは言えないから、経過観察しましょう」ということなんですね。

また、結節であるなら小さくても悪性の可能性があるのですから、2年後とせず、せいぜい半年後には、再検査を行ったほうがいい。どんなしこりでも、保護者は不安なものなのです。丁寧に検査をし、きちんと説明しなければ、何のための検査なのかわからなくなってしまいます。

しかしながら、結果の評価については、比較できる一般の小児の結節や嚢胞のデータがなく、「今回の数値が何を意味するのかよくわからない」というのが本当のところだと思います。チェルノブイリのデータは機器も古く、比較は難しいでしょう。これから、被災地以外の子のデータを集めるそうですから、まずはその結果待ちになりそうですね。


H24年度甲状腺検査における結節・嚢胞の大きさ別の割合


甲状腺癌が数年で出ないとは言い切れない


去る9月、18歳以下の子ども1人から甲状腺癌が見つかりました。これについて、検査に関わった医師は「チェルノブイリでも甲状腺癌が見つかったのは4年後だから、これは原発事故とは関係ない」というようなことを言われていました。でも、それは違うと思います。

子どもの甲状腺癌は、通常、年に100万人中1~2人しか出ません。しかし、チェルノブイリでは事故の翌年に4例見つかっており、すでに兆候が出ていました【図4】。


チェルノブイリの北方にあるベラルーシ共和国における小児甲状腺がんの推移(出典:「これから100年放射能とつきあうために」)

ですから、今回の福島の1例も兆候かもしれず、今言えるのは「事故との関係はわからない」ということだけ。関係ないと言い切るのは危険です。

それともう一つ。「甲状腺癌は取ってしまえば怖くない」というのが一般的な見解になっていますが、これもそうとは言い切れません。実は、ほとんど知られていないのですが、チェルノブイリでは、子どもの甲状腺がんの6例中1例に、肺への転移が見つかっているんです。この事実は決して見過ごせません。

今回の原発事故は、国難です。チェルノブイリの事故で学習せず、放置してきた国民には、反省が必要だと思っています。避難や丁寧な検査に十分な国費を投じ、対処していくしかない。私はそう考えています。

※癌遺伝子とは、正常な遺伝子が飲食、喫煙、放射線などで傷つき、癌を発現させる可能性のある遺伝子に変化したもの。

これから100年放射能と付き合うために


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